ストリートダンスにおける天才の話
人は天才という言葉が好きですし、天才ってやはり誰でもなりたいけどなれないものだからこそ憧れるし、そういった人に対する興味といえば本当に尽きないものです。
俗に言う天才とはどんな人を言うのでしょう?スポーツ界、野球界では古くは長嶋さん、現在ではイチローなどがその代名詞としてよく言われております。ですが、長嶋さんとイチローではまたタイプが違い、長嶋さんは派手なプレーや、無類の勝負強さを持ち記憶に最も残るタイプ、イチローは前人未踏の記録を打ち立て続ける記録に残るタイプです。どちらも天才ではありますが、やはり人々が魅了されるのは前者の長嶋さんタイプですね。
そうはいっても長嶋さんは記録も素晴らしかったので、記録はさして凄くはないものの、引退しましたが、阪神、ニューヨークメッツ、日本ハムと渡り歩いた新庄選手など、噂される話でいいますと、ほとんど練習はせず、自らのセンスと素質だけで厳しいプロの世界、ましてやメジャーリーグでも活躍したのですから、どがつく天才なのでしょう。握力などは、90㎏あったと言われます。そして敬遠のボールを打ちに行ってサヨナラヒットを打ったり、5年12億円の阪神の契約を蹴って、年俸2,000万円の大リーグで契約したり、とにかく常人では考えつかない発想と感性の持ち主でした。
ことストリートダンス界でいいますとプロ野球界と比べて歴史も短い業界ではありますが、日本にストリートダンスがほとんど普及していない1970年代に東芝EMI主催の世界ディスコダンスコンテストで優勝したTEDDY DANさん、日本ストリートダンス創成期をB-BOY魂とポジティブな活動で華やかに彩ったHORIEさん、草も根もない状態だったダンスシーンを作り上げ、B-BOYとしても日本中からリスペクトされ続けるMACHINE原田さん等々、それぞれの年代、歴史において素晴らしい功績と実績を残した天才、偉人がいます。
現在において、よく天才の代名詞として呼ばれるダンサーでは、YOKOIさん、KATOさん、GUCCHONさん、皇帝心仙人さん等の名前を聞くことが多いです。ジャンルでいいますと、HIP HOPやPOPのダンサーがそう呼ばれることが多いようにも思います。ですが最近ではJAZZ系のダンサーにも明らかに天才肌と呼ばれるダンサーの名前が聞こえて来ます。東京☆キッズのMIKEYさんや、KOHARU SUGAWARAさん、QUEEN OF SWAGのRIEさん(RIEさんはHIP HOP)など、東京のみならず世界的にも評価されている素晴らしい天才ダンサーが続々と登場しております。ましてやKOHARUさん、RIEさんはまだ20代前半という、将来が本当に恐ろしいダンサーさんです。
さて、こと関西におけるJAZZ系ダンサーの天才肌とは誰なのでしょうか?私は自分の目で見てきた衝撃から、TAA!!のAYAさんを挙げたいと思います。OUTSET時代によく目にした、独特の音感から飛び出すようなダンスムーブはジャンルを飛び越えて毎回衝撃を与えてくれました。ここ数年間は活動を控えられてましたが、いよいよ復活するようなので、個人的に凄く楽しみでしかたがありません。
また、先日脱退を表明しましたが、元GROOVIN/SLASHのHiRoさんの音が体に突き刺さり、体がちぎれるようなダンスも大好きでした。あれこそまさに天才といえるでしょう。
今後もスーパーキッズ世代が大人に近づき、ますます天才と言う言葉が使われるようになることでしょう。ですが、それぞれ今回名前を使わせて頂きました天才の方々は、天才といわれることをもしかしたらよく思われないかも知れません。おそらくそう呼ばれる以上の努力をしてきた方々です。また、天才と呼ばれるが故の苦悩として、むしろ天才と呼ばれない方が、楽しく自由にダンスが(表現が)できたというジレンマがあるのではないでしょうか。
天才と言う言葉は本当に魅力的ですが、その言葉の美しさが故、儚くて切ないものだとも感じます。今後もダンス界における天才の出現を楽しみにしております。